粧裕とお兄ちゃん(粧裕誕2008)

は~い、みんな元気ぃ?粧裕で~す。
え?何所の粧裕かって?やぁだぁ~。粧裕って言ったら、夜神粧裕に決まってるじゃない!
そうで~す!みんな大好き夜神月の妹の粧裕で~す!
はい、そこ!お兄ちゃんがダメなら妹でも、と思った人!
将を射んと欲すれば馬を射よ、と思った人!
正解だけど世の中そんなに甘くな~い!!
そりゃぁね、お兄ちゃんには負けるけど、粧裕も十人並みに可愛いって言われてるしぃ。
街でスカウト(お兄ちゃんと一緒だとさらに確率が上がる)された事あるしぃ。
粧裕を狙いたくなる気持ちも判るんだけどォ~。
でも、お兄ちゃんへの道とは別の意味で、粧裕とのラブラブへの道も厳しいんだから~。
何故かって言うと、お兄ちゃんはあれでなかなかどうして結構なシスコンなんですぅ。
粧裕に恋人出来たらお兄ちゃんに言えよ、お兄ちゃんがチェックしてやるからな、
って言うのが口癖なんだから~。お兄ちゃんのチェックは厳しいよォ。

(お父さんの口癖は『私の目の黒いうちは月も粧裕も嫁にやらん!』なんだけどね)

まぁ、それ以上にお兄ちゃんとラブラブの道は遠いのだ!
ほら、みんなも知ってる通り、お兄ちゃんが付き合った彼女彼氏の数半端じゃないから。
だからけっこう目は肥えてるし場慣れしてるし、今更恋のトキメキなんて有り得ないって感じ?

(長続きしないのが唯一の欠点?次から次へと、全然途切れないのが凄いよね)

よ~っぽどシャレの効いた告白しないと振り向いてもらえないよ。
あ、外見は二の次みたいだからその点は安心して。
中身がね、なんかツボにヒットないとダメみたい。
え?どんなツボかって?それが良く判んないのよねぇ、妹のあたしでも。

『平凡な中にもキラリと光る個性』

みたいなこと言ってたから自分の得意な事アピールしてみれば?
蓼喰う虫も好き好き?ゲテモノ好き?何かそれに近いものがあるから、うちのお兄ちゃん。

 

話それちゃった。
それでね、何で粧裕が出て来たかって言うとね、某名誉会長さんに聞かれたの。
粧裕のお誕生日にお兄ちゃんがくれたプレゼントの中で一番印象に残った物は何かって。
実は今日、粧裕の誕生日なんだよねぇ。今年は受験用問題集だったから問題外なんだけど、

(お兄ちゃんのバカ~!本当のプレゼントは受験が終わってからって、意地悪すぎるよ~!)

いつもはバースディケーキと一緒に粧裕の好きな物をプレゼントしてくれるんだ、お兄ちゃん。
ほら、例の月恒例お誕生日企画のケーキ。あれ、粧裕なら無条件で毎年貰えちゃうんだよ~。
へへへぇ、羨ましいでしょ~。これぞ妹の特権!
でぇ、今までで一番印象に残ったプレゼントの話なんだけどォ。
ふふ、うふふふふふふふふ~~~~~。な・い・しょ。
って言ったら気になる?気になる?気になるよねぇ~~~。
だから、これを見てる人にだけこっそり教えちゃいま~~~す!
それはぁ、粧裕が小学校に上がった年の誕生日プレゼントで~~っす!!
当時のお兄ちゃんって言ったら(小学4年)そりゃもう可愛くってぇ、
ショートカットに短パン穿いてても女の子にしか見えなかったのよね。チビだったし。

(あ、その証拠の数々は粧裕秘蔵の写真でお確かめくださ~い!
 隠しだから頑張って探してね(^O^)/)

だから女の子は当然、男の子にも超!モテモテッ!!クラスの席替えなんて戦争よ、戦争!!!
担任の先生も自分の目の前の席にお兄ちゃんを持ってきたくって、
生徒間の争いに参戦したって逸話が残ってるくらいなんだから。
クラス委員の委員長は当然クラス全員一致でお兄ちゃんを指名。
でもって、普通は誰もが嫌がるはずの副委員長に残りのクラスメイトが全員立候補しちゃってぇ。
皆が皆自分に投票するもんだから何時まで経っても決まらなくて、
仕方なくアミダで決めたとか。

(その時お兄ちゃんは投票させてもらえなかったらしい)

グループ行動のメンバー決めも、水面下で熾烈な争いが繰り広げられてたって話だし。
ホント!罪作りなお兄ちゃんなんだからっ、キャッ!!
そんなお兄ちゃんは、小さな時からやっぱり器用で何でも出来たのよね。
粧裕が物心ついた時にはもうお兄ちゃんが作ったおやつを食べてた気がする。

(まぁ、粧裕が味見役にされてたような気もするけど。
 完成品の行き先は当時はお父さんだったのよね)

お母さんが料理上手だからその血を受け継いだのかな?
お兄ちゃん優等生だし、お母さんの手伝い良くしたし、

(高校生になったら、なんか男の威厳が、とか言ってあんまり手伝いしなくなったけど。
 それでも部屋の掃除と洗濯は自分でしてるから偉いよね)

傍で見てるだけで料理の仕方覚えちゃったって感じ?
誰?粧裕とは大違いって言ったの!?
いいもん、料理ぐらいできなくたって!お兄ちゃんみたいな料理上手の彼氏捜すから!
あ~、また話ずれちゃった。
うふふ、粧裕がお兄ちゃんから貰ったプレゼントの話だったよね。
えへへへへへぇ~。実はね、その年はね、前もってお兄ちゃんに何が欲しいか言わなかったんだ。
当日発表するからその時頂だい、って言ったの。
それじゃぁ用意できないって、お兄ちゃん凄く困ったみたいだけど、
粧裕がそうするのって言い張ったら、お兄ちゃん折れてくれた。
うふふふ~、お兄ちゃん、粧裕にはとっても甘いんだ~。
小学校入学かぁ‥‥なっつかしぃ~~~!
あの頃はね、小学校に上がってやっとお兄ちゃんと一緒の学校に行ける!って大喜びしてたのに、
お兄ちゃんと一緒にいられるのは登下校の時だけだって気付いて、
ちょっと落ち込んじゃってたみたいなのよね~。
しかも、町内の小学生みんなで列組んで小学校まで歩いて行くんだけど、
ここでもお兄ちゃんの隣(もしくは前後)の座を巡って争いが毎日のように起きてたのよ。
歩道のある所では5・6年生が1・2年生と手を繋ぐんだけど、
皆お兄ちゃんと手を繋ぎたいから喧嘩になっちゃって、
話し合いで順番に繋ぐ事になったのよね。
お陰で1週間に1度しかお兄ちゃんと手を繋げなくて‥‥不条理だと思わない?
粧裕とお兄ちゃんは実の兄妹なのにぃ!
何が悲しくて、お兄ちゃん狙いのブスに手を引かれてなくちゃいけないのよっ!
あぁ、いけない、また話が‥‥とにかくね、その年のプレゼントは、
普通のプレゼントとは一味違うものを頼んじゃったの(^O^)!
そう、あれは‥‥‥

 

 


「誕生日おめでとう、粧裕」
「粧裕ちゃん、おめでとう」
「おめでとう、粧裕」
「ありがとう、お兄ちゃん、お母さん、お父さん」

あの年の粧裕の誕生日には珍しくお父さんも早く帰って来て、
家族全員で粧裕の誕生日を祝ってくれたの。
テーブルにはお母さんが腕を振るったご馳走が並んでて、
中央にはお兄ちゃんが最近レシピを覚えたバースディケーキがドンと置かれてた。
上に乗っけたバラの花や板チョコのメッセージボードは買って来たものだったけど、

(きっと来年はこれも手作りに違いないって思ったっけ)

スポンジの間には粧裕の大好きな苺とメロンがギッシリ挟んであって、
ナイフで切る時それが食み出るもんだから、あのお兄ちゃんが珍しく慌てたのよね。
ちょっと可愛かったな、その時のお兄ちゃん(写真見てね)。
それからお兄ちゃんとお母さんとお父さんが、
定番の‘Happy Birthday’の歌を歌ってくれて、
粧裕がケーキの蝋燭(数は7本)を吹き消して、お楽しみのプレゼント受け渡しになったの。

「はい、粧裕。欲しがってたお人形さんのお洋服」
「やったー!ミニのウェディングドレスだ!ありがとう、お母さん!」
「次はお父さんだ。ほ~ら、粧裕。可愛いだろう?」
「やだ、お父さんってば!こんなヒラヒラした服、何所にも着てけないよォ!
 でも、嬉しい。ありがとう」

お母さんからは前々から欲しかった着せ替え人形のお洋服。

(ウェディングドレスは当然ながら小物と靴とティアラ付きの豪華セット。
 お色直しのドレスまで付いてるから普通の服のセットなんかよりメチャ高い!)

お父さんからは、まるでその小さなドレスに合わせたかのような、
等身大の(つまりは粧裕用の)白いヒラヒラしたドレス。やっぱりティアラ付き。

「そ、そんなっ!着てくれないのか?粧裕!」
「泣かないで、お父さん。よそゆきにも無理でも次のピアノの発表会にはOKだから」

これでもかってくらいスカートはヒラヒラしてるしリボンだらけだし、
背中には小さな羽根が付いてるし、
とてもじゃないけどこれを着て外になんか出られないよ。
『王子様とデートに着て行く勝負服が欲しい!』なんて言わなきゃよかった。
素直に、『お兄ちゃんと』って言っておけばよかったな。
そうしたらお父さんの事だから、『なんて仲の良い兄妹なんだ!』って感動して‥‥‥

(デートって単語は意図的にスルーするんだろうなぁ。
 どこの馬の骨とも知れない男とデートさせるくらいなら、兄と!
 とかって思うんだよ、きっと。
 あぁ、これから先が思いやられるなぁ。ちょっと憂鬱‥‥)

これ以上に凄い服選んだだろうからやっぱりこれでいいか。

「ありがとう、お父さん、お母さん。あ、このドレス今着ていい?」
「いいとも~~!」

やだ、お父さんったら。どこぞのバラエティ番組みたいな事言ってる。

「ほほほ、そんなに嬉しかったの?粧裕」
「え~?嬉しいに決まってるよォ」
「あら、でも、一番楽しみにしていたのはお兄ちゃんからのプレゼントでしょ?
 でも、月は何も用意してないみたいだけど‥‥」
「だって、お母さん。粧裕が当日でないと欲しいもの教えないって言い張るんだ‥‥
 だから僕、何も用意できなかったんだよ」
「おや、そうなのか?」

不思議そうにしているお母さんとお父さん、それからちょっと困り顔のお兄ちゃん。
そんな3人にニッコリ笑って、

「それはこれから言うの!だから、ちょっと待っててね!」

いそいそと隣の部屋に行ってドレスにお着替え。
お母さ~ん、後ろ上げてぇ~。
あらあらやっぱりこうなるのね、ほほほほ。
ティアラも付けてぇ。
お父さんもお兄ちゃんもまだ覗いちゃダメなんだからね!
粧裕、あぁ粧裕‥‥お父さんのプレゼント気に入ってくれたんだな‥‥!
やったぞ!今年こそは月を超えた!今年こそ私のプレゼントが一番だ!!
おほほほほ、貴方ったら何夢みたいなこと言っちゃってるんですか。
そんな事あるはずないでしょ。
何時でも何処でも粧裕の一番はお兄ちゃんなんだから。
あぁ、父さん泣かないで。父さんは僕が何時でも何処でも一番尊敬している人だから。
月ォォ!なんて優しい子なんだぁ~!!
お前も粧裕も私の目の黒いうちは絶対嫁にはやらんぞ~!!!
父さん‥‥それ、所かまわず言わないで‥‥僕、死んでも嫁には行かないから‥‥
そうかそうか、ずっと父さんの傍にいてくれるのか!なんて親孝行な子なんだ!!
おほほほほ、何バカな事言ってるんですか。ほら、粧裕の着替え終わりましたよ。
おォォ!なんて可愛いんだ、粧裕!粧裕も月も私の目の黒いうちは‥‥‥!!

「ちょっとお父さん邪魔!粧裕とお兄ちゃんの間に割り込まないで!!」

日頃仕事が忙しくって家族の団欒に飢えていたらしいお父さん。
自分がプレゼントしたドレスに着替えた粧裕を見てすんごく興奮してた。
粧裕が可愛いのは当たり前でしょ?お兄ちゃんには負けるけど、お兄ちゃんの妹なんだからね。
小学校の下駄箱にラブレターが入ってた事だってあるんだから(幼稚園の時は流石になかった)。
字が汚くて読めなかったからゴミ箱にポイしちゃったけど、それをお兄ちゃんに言ったら、

『バカ、捨てたらダメだろ。そう言う奴に限ってストーカーとかになったりするんだぞ。
 相手が焦れて姿を現した時どう対応したらいいかお兄ちゃんが教えてやるから、
 今度からは捨てるんじゃない、いいな。
 精神的慰謝料を払わせる時の大事な証拠品になるんだから』

何だかもの凄く実感のこもった返事が返って来て、
ストーカー予備軍のあしらい方なるレクチャーを受けちゃった。

(当時小学1年の粧裕に理解出来ると思ってる所が、
 お兄ちゃんらしいと言えばお兄ちゃんらしいよね)

凄いよ、お兄ちゃん!流石は粧裕のお兄ちゃんだよ~!!

「えへへぇ、どう?似合ってる?」
「粧裕~~!可愛いぞぉ~~!!流石はお父さんの天使だ~~~!!!」
「だからぁ、お父さんは邪魔だってば」
「粧~~裕~~~(>_<)」
「オホホホホ、これから月からのプレゼント授与式なんだから貴方は引っ込んでらして」

バレエのチュチュに似た白いレースのドレスには、
同じく白いレースのお花とリボンが付いていて、
背中には小さな天使の羽。
頭に銀のティアラを載せれば粧裕だって少しは見れたもんなんだから。

「お母さん、別に僕まで着替えなくても‥‥」

でもって、お兄ちゃんも粧裕が着替えてる間に七五三スーツに着替えてた。
お母さんが手を回しておいてくれたんだ!
やっぱり女は女同士だね!!ありがとうお母さん!!!

「ほら、こうやって月と粧裕が並ぶと何処かの国の王子様とお姫様みたいじゃありませんか」
「大げさだよ、お母さん」
「や~ん、粧裕、そんなに可愛い?」
「うぉぉぉぉ~!私の目の黒いうちは~~~!!!!」
「貴方、やっぱり引っ込んでらっしゃい」

五月蠅いお父さんをお母さんが肘鉄一発で黙らせて、静かになった所で兄妹揃って記念写真。
粧裕のドレスがちゃんと見えるように粧裕の後ろに控え目に立ったお兄ちゃんは、
まるで本物の王子様みたいに優しく笑っていた。

(その時の写真は今でも粧裕の宝物でっす!)

でも、これから粧裕がどんな我儘なオネダリをするのかと内心ドキドキしてるらしくって、
ちょっと涙目に見えるのはきっと気のせいじゃない。

「じゃぁ、お兄ちゃん!」
「何だい?粧裕」
「これから、今年の粧裕の欲しいプレゼント№1を発表しま~~す!」
「ははは‥‥なるべく無難なものにしてくれると嬉しいな、粧裕」

ブナン、って何?そんな日本語、粧裕には難しくて判んないも~ん。
涙は引っ込んだけどちょっと笑顔が引き攣り気味のお兄ちゃん。
そんなお兄ちゃんと正面から向かい合って、
粧裕はいよいよ欲しいものの名前を‥‥‥
ううん!そんなのまだるっこしいから、即行動!!!
女は度胸!男は愛嬌なんだから!!(お母さんの受け売りでっす!!!)

「粧裕?」

ズイと一歩踏み出して、お兄ちゃんの両手をガッシリ掴んで、

(粧裕の小さい手じゃ掴み切れなかったけど)

それからうんと伸びをしてお兄ちゃんの顔に粧裕の顔を近づける。

「‥‥‥!?」
「まぁ、粧裕ったら(^v^)」
「さ、さ、粧裕?\(◎o◎)/!」

チュッ♪

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「えへへへへ~。やった~!念願のくちびるキッスしちゃった~~!!」

何をしなくてもサクランボ色のツヤツヤしたお兄ちゃんの唇に、
お母さんが特別にルージュを引いてくれた粧裕の唇をウチュッとくっ付けて、
誕生日のお祝いキッスを貰いました~~!!
だって、ホッぺにチュウ♪はいっつもして貰ってる(粧裕もしてる)んだけど、
唇にチュウは流石にダメだってしてくれないんだもん、お兄ちゃん。

(お母さんの話だと、粧裕がうんと小さい頃は粧裕の方からいっぱいしてたんだって。
 キスと言うよりタコの吸盤?大口開けてお兄ちゃんの唇にパカって吸いついて、
 お兄ちゃんの息塞いでフガフガさせて大喜びしてたらしい。
 鼻で息出来るから苦しいはずないんだけど、お兄ちゃんわざと苦しい振りしてたらしい。
 何時でも粧裕に優しいし、本気で遊んでくれるんだよね、お兄ちゃんは)

「ほほほほ、粧裕が欲しかったプレゼントって、お兄ちゃんとのチュウだったのね」
「そうで~っす!ありがとね、お兄ちゃん!粧裕、嬉しい~~~!!」
「これなら準備も何もしなくていいわけよねぇ。何と言っても安上がりだし」

タダってなんて素敵なのかしら!なんて、カメラを片手にニコニコしてるお母さん。
あ、お母さん!さっきの決定的瞬間撮ってくれたんだ!!やったね!!!
あとで粧裕のアルバム(幼稚園の卒業記念の品)に貼っておこっ~と♪
それに引き換えお父さんったら、何か顔色悪いよ?
こ、これも仲の良い兄妹の、中睦まじい日常の一コマ‥‥
とか何とかブツブツ言ってるしぃ。
やだなぁ、愛の一コマと言ってよ、愛の!
ん?あれ?何かお兄ちゃんも静かだよ?何で?
もしかして粧裕のチュウに感激しちゃった?
やだぁ~、お兄ちゃんたら!だったら、これから毎日してもいいよ!
ホッぺにチュウはこれで卒業!!

「‥‥‥‥‥の‥‥‥‥‥ス」
「今年はプレゼント探しに苦労しなくてよかったわね、月。
 あら?どうしたの?なんだか顔色が‥‥」
「お兄ちゃん?」

でも、本当に何だか様子がおかしいかな?って、思った矢先‥‥‥

「僕のファーストキスが~~~~!!!!(>_<)」

と叫んだお兄ちゃんがリビングを飛び出し二階の自分の部屋へ逃げ込んじゃった!

「え?え?」

何だか目にいっぱい涙が見えたのは気のせい?

「あらやだ、月ったら。
 幼稚園に上がる前からモテモテだったくせに、ファーストキスは未だだったのね」
「うそ!?ホントに!!??」

え~~!!!だったら粧裕がお兄ちゃんの初めてを貰っちゃったのォ~~~!!!???

(もう、この時の粧裕ってば、マジで小躍りして喜んだっけ。今思い出しても頬が緩むよ~)

けっこう純情だったのね、月。可愛いわぁ~♪
なんて言ってるお母さんの手にはやっぱりカメラ。
もしかしなくても、涙目で走り去ったお兄ちゃんの姿を激写してた?
流石だよ、お母さん!もうっ、尊敬しちゃう!!

「ラ、月ォォォ~~~~~!!傷は浅いぞ~~~~~~!!!!」

そうして、やっと我に返ったお父さんが慌ててお兄ちゃんを慰めるべく(失礼ね)、
そこらじゅうにぶつかりながらお兄ちゃんを追いかけて行き、
お母さんは徐に後片付けに立ち上がり、
粧裕の7歳のバースディパーティは終わったのでした~!

「えへへっ、奪っちゃった♪」

 

 

 

しか~~~しっ!
次の日、昨日のショックは何処へやら、お兄ちゃんは何時も通りのお兄ちゃんで、
やっぱりホッぺにチュウしかしてくれなかった。
どういう事っ!!??

「粧裕もファーストキスは大事に取っておかないとね」

え?え?何それ?ファーストキスは粧裕とでしょ?
何なかった事にしてるの?お兄ちゃん!
てなふうに、にこやかに笑いながらもちっとも真面目に相手しれくれない!
思わずパニックになっちゃった粧裕に更に追い打ち掛けてくれたのは、
てっきり味方だと思っていたお母さんだったのよねぇ~、ハァ、がっくし。

「おほほほほ、家族のチュウは数にカウントされないのよ~」

そう言って笑いながら粧裕とお兄ちゃんを学校に送り出してくれたお母さん。
亀の甲より年の功?
粧裕がベッドで幸せな夢(もちろん、お兄ちゃんのお嫁さんになる夢)を見てる頃に、
お母さんってばこっそりお兄ちゃんの部屋へ行って、
同じ事言ってお兄ちゃんを宥めたらしい。
チッ、余計な御世話を‥‥

『粧裕のキスがカウントできるんだったら、
 月のファーストキスの相手はお母さんになっちゃうでしょ』

そう言われちゃったら反論しようがなくて、
仕方ないから公式には身内はダメって事にしてるけど、
お兄ちゃんのファーストキスの相手は粧裕だ!ってのは絶対!!譲らないんだから!!!
覚えておいてよね!!!!!
とまぁ、そういう事で、
今までお兄ちゃんから貰ったバースディプレゼントはどれも素敵だったけど、
7歳の時のプレゼントが一番!って理由が判ったでしょ?
お兄ちゃんってば、いつの間にか来る者拒まずになっちゃって、

(博愛主義って便利な言葉だよね)

キスの相手(キスの回数じゃないのがミソ)なんて、
両手どころか足の指を使っても足りないくらい(某山元名誉会長調査結果)らしいけど!
やっぱりファーストキスは特別なんだから!
と言う事で、お兄ちゃんのマジキスは粧裕が守りま~す!
物心ついた時からお兄ちゃんに言い寄って来る女達(男も含む)を品定めしてきた粧裕の目は、
とっても肥えてるし、とっても厳しいんだからねっ!覚悟しといてよ!!

(お父さんは当てにならないってお母さんが言ってたから、粧裕がチェックするのだ!)

あ、当然の事だけど、この話をばらしたってのはお兄ちゃんには内緒。
うふふ‥‥何処からか洩れたりしたら、速攻!このサイトの事お兄ちゃんにばらすわよ。
そうなったら皆のパソコンと、その中のデーターの安全性は保証できなくなっちゃうからね。
お兄ちゃんこの前、なんか面白いウィルス作っちゃったって、笑いながら言ってたから。
試したいけど流石にこればっかりは、って自重してるけど、どうなるかしらねぇ(^v^)。
まぁ、可哀そうだから隠しで七五三ルックのお兄ちゃんの写真上げといたから、
そっちも頑張って探して見て。
お母さんが無理やり着せた振袖写真だから。超!レアだよ。


じゃぁ~ね~♪

 

 

 

 

 

 

 

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