リハビリSS


その1

 

「L‥‥」
「何ですか?ワタリ」
「今日も平和ですなぁ」
「そうですね。私の興味を引くような事件もトンとなくて退屈で平和な日です」
「平和ついでにふと考えてみたのですが‥‥」
「何をですか?」
「L。子作りして見ませんか?」
「ブフォォォォ‥‥ッ!!」
「なんと無作法な。紅茶を噴き出すとは‥‥」
「だ、誰のせいですか!誰の!?」
「いえ、私もね、Lの後継者候補の育成だとか色々やっては見たのですが」
「私の話を聞きなさい!」
「頭の中身はともかく外見だとか個性だとか、
 どうにもこれだ!と思う子になかなか行き当たりませんで‥‥」
「私の後継者選びは宝くじの類とは違います。
 しかも、外見って何ですか!外見って!!」
「それで私、改めて考えてみたのです」
「‥‥何やら嫌な予感が‥‥」
「IQの高い子供をかき集めてエリート教育を施すのもいいですが、
 はなっから、LのDNAを受け継いだ子供をゼロから育てた方が、
 より確実に私好みの後継者に育つのではないかと‥‥」
「‥‥貴女好みの後継者って何ですか?(答えを聞くのも怖い気が‥‥)」
「勿論貴方ですよ、L」
「ワタリ‥‥私は同性愛者でもフケ専でもありま‥‥」
「甘いものが大好きな引き籠り隈カエル。
 変人の名を欲しいままにする猫背探偵!実に素晴らしい!!」
「‥‥‥人間、中身で勝負‥‥」
「貴方なら!かの有名はシャーロック・ホームズにも勝てますとも!!」
「推理力で?」
「いえ、変人振りで」
「‥‥‥‥‥‥‥ですから、人間中身で‥‥」
「人間、見た目が大事です。インパクト勝負です!中身は二の次です!!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「と言う訳で、ちょっと子作りに励んでみてはいかがでしょう。
 貴女好みの女性を何十人か見つくろって参りますから。勿論、バッチリ危険日な女性を」
「何人じゃなくて、何十人ですか‥‥安全日じゃなくて危険日‥‥」
「一人につき一発、一晩三発から四発。
 いえ、精力剤と媚薬を使えば一晩に五~六発は行けますな」
「ワァタァリィィィィィ~~~~ッ!?」
「と言う事で、女性の御注文があるようでしたら遠慮なく仰ってください」
「‥‥‥本気なんですか?只の茶飲み話じゃなくて?」
「話す前は90%程でしたが、今は100%本気ですとも」
「‥‥‥‥‥貴方、いい笑顔してますね、ワタリ。目が全然笑ってません。
 エロの欠片も感じられないのが何とも不気味です」
「ですから、本気だと言いました。
 ご安心ください。生まれた子は全員私が責任もってお育ていたします。
 貴方は只種をばら蒔いて下さるだけで結構です」
「私は種付け馬ですか‥‥」
「むしろ、種付けカエル?」
「図的にも想像できません‥‥」
「まぁ、難しい事は考えず、ここは一発。いえ、当たるまで何発でも」
「まさしく数打ちゃ当たる作戦?」
「畑の御注文には誠意を持ってお答えいたします」
「それ、女性蔑視用語では?もしくはセクハラ‥‥」
「大丈夫。このご時世、金が嫌いな女性はそうそうおりませぬ」
「万が一当たったら、生まれた子供は金を払って取り上げる気満々ですね?」
「契約内容に関しましては既に弁護士に相談済です。大船に乗ったつもりでいてください」
「‥‥もはや人身売買に近い気が‥‥」
「DNAの半分は貴方なのですから大丈夫。権利は十二分にあります。
 養育権で裁判を起こされても経済的条件で勝つ見込みは100%です」
「‥‥‥‥私、自分に似た子供がうじゃうじゃいるワイミーズハウスなんて、
 全くちっともドきっぱり!見たくないのですが‥‥」
「つまり、子作りには反対ではないと」
「いえ、そう言うわ‥‥」
「ご安心ください。既にお相手の女性を別室に待たせてあります」
「ワ、ワタリィィィィィ~~~~~~ッ!?」
「既にLが飲んだ紅茶にもその手の薬は仕込み済みです」
「グホッ‥‥な、何やら急に体が熱く‥‥」
「カエルの殿様一名、ご案内~~~~~」
「ど、何処のキャバクラの呼び込みですかぁ~~~!!」

 

 

★  ☆  ★  ☆  ★

 


その2

 

「太陽が‥‥黄色いです‥‥」
「何をベタな事を仰っているのですか、Lともあろうお方が。
 だいたい、外に出て太陽を見上げる習慣などお持ちではないでしょう」
「クッ‥‥これもあれも何もかも!貴方のせいなんですが?ワタリ」
「私の?は?私、何かしましたか?
 不肖、このワタリ、Lの為になる事なら山ほどやってきましたが、
 貴方に文句を言われるような事は何一つ!やって来なかったはずです」
「どの口が言いますか!
 この1カ月、私に怪しい薬を盛り続けたのはワタリじゃないですか!!」
「薬に操られるのがおいやなら警戒すればよろしい事でしょう。
 それを毎回毎回、甘~~いお菓子と一緒にペロリ!
 と、呑み込んでしまわれるのは何処のどなたですかな?」
「クッ‥‥つい一時の誘惑に駆られて‥‥手が勝手にお菓子を摘みあげ‥‥」
「ハァ‥‥しかし。効果は一向に出ませんでしたな」
「気が付いたら心臓はドキドキ股間はギンギン。
 そんな気はさらさらないのに体が勝手に‥‥」
「毎日毎日妊娠可能で才色兼備な女性を用意するのももはや限界」
「もう当分女はこりごり‥‥」
「いえ、1ヶ月間ローテーションで2順目に突入という手も有りますが‥‥」
「!私に腹上死しろと言う気ですか!!」
「流石のLの隈が通常の倍に広がってしまったからには、数打ちゃ当たる作戦はこれで打ち切りですか」
「やった~~!種馬返上!!」
「仕方ありません。次からは一極集中作戦に切り替えます」
「未だ諦めてなかったんですか!?」


「と言う訳でこの半年、Lにはナニは月一で、予定日以外は出すのを我慢していただいたのですが‥‥」
「だからってスポーツで欲望を発散って‥‥何処の修行僧ですか私」
「夜のお相手の女性はそれこそ最高ランクをご用意しましたのに‥‥一極集中作戦も失敗でした」
「あぁ‥‥ちょっと鼻血が‥‥溜まってます、私」
「検査の結果、Lには異常は何一つ発見できなかったのですが‥‥
 むしろ精力は強い方だと出たのですが。
 精子の動きも平均以上に活発で、予定では全員妊娠していたはず‥‥」
「子供は天からの授かりもの、と言うではないですか。
 もしくは、神が私に『父親になるのは早い』と仰ったのですよ」
「私、もう70の大台に乗ってしまいました‥‥」
「大丈夫!ワタリなら100歳まで現役です!!」
「‥‥あと30年もぐうたらカエルの世話をするのですか‥‥」
「は?何か言いましたか?」
「いえ、何も。それより、例の依頼を引き受けるおつもりですか?」
「キラ事件ですか。勿論そのつもりです」
「しかし、危険なのでは?」
「大丈夫です。私が死んでも次のLがキラを捕まえてくれます」
「あのクソガキどもが‥‥?」
「は?何か言いましたか?」
「いえ、判りました。では、そのように手配いたします」
「お願いします」


「L‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「瞳孔が開いていますぞ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「しかも、鼻の穴まで‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「小鼻が微妙にヒクヒク動いているのは匂いを嗅いでいるからですか?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「しかし、監視カメラ越しでは匂いは嗅げませんぞ」
「ワタリ‥‥」
「はい」
「わたし、センター試験とやらを受けに行こうかと思います」
「その心は‥‥」
「キラはきっとカスタードクリームの匂いがするはずです!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥そのように手配いたします」
「宜しくお願いします!」


その瞬間ワタリは悟った。
この手でもう一度天才を育成する事は無理だと。
しかし、上手くすれば今目の前にいる天才をもう30年こき使う事が出来るだろうと。
この、暗殺よりも自堕落病で何時死んでもおかしくない天才の代わりを育成するより、
自分に代わってLの手綱を取ってくれる人間を育成する方が断然早い!と。

「夜神月‥‥私の目に狂いがなければ‥‥」

見事に整理整頓された部屋。規則正しい生活。
運動能力に優れ知能も高く品性も悪くない。
磨けば光る玉、どころか掘り出し物間違いなし!と、ワタリの勘が叫んでいる。
何より!彼はLの好みにドンピシャ、猫、いやいやカエルまっしぐら!!
ストライクゾーンど真ん中!やったぜカエルの大将!!ドンドンパフパフ!!!

「決めました。
 夜神月を冤罪だろうが何だろうがキラ容疑で逮捕し、二代目ワタリになって貰います!
 そして、私の残り30年の人生、
 美人で優しい孫(夜神月)に老後の面倒を見てもらうのです!!」

キッチンの片隅でLの3時のおやつを用意しながらワタリがそう誓った瞬間、
監視カメラの映像の中の夜神月が小さくくしゃみをした。

「はぁ‥‥くしゃみをする姿も可愛いです、キラ‥‥」

それは、Lが思いっきりメンクイであり、
やっぱり変態だった事が判明した瞬間でもあった。

 

 

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