※これはいつものL月MNで楽しく探偵(in日本)をやってる設定話ですが、
「関東お月見会」シリーズとも微妙にリンクしています。
L「今年もやってきました、雛祭り。女の子の節句、桃の節句です」
月「だから何?」
L「おや、月君。どうしました?何やらご機嫌斜めのようですが」
月「別に‥‥」
L「いえ、明らかに不機嫌です。眉間に薄っすら縦ジワが寄ってます。
コーラルピンクの可愛らしい唇も微妙に引き攣ってます」
月「男に可愛らしいなんて言うな!」
L「では、美人さん、と言い直し‥‥」
月「それも却下!!」
L「困りましたね。どうして今日に限ってそんなに機嫌が悪いのですか?
イケメンの自覚120%のいつもの貴方なら、
私が容姿の事で誉めようがからかおうが軽く流すだけですのに。
これ、八当たりですよね?」
月「顔の話はするな。この顔で得した事より損した事の方が多いんだ‥‥
カエル顔のお前に僕の気持ちは判らないよ」
L「さり気に自慢&嫌味をありがとうございます。
月君のその倒れてもタダでは起きない根性が大好きです。
さてさて、そんな月君がそこまで不機嫌になるとは‥‥
判りました。雛祭りに余り良い思い出がないのですね?」
月「うるさいなぁ」
L「お決まりパターンとして、
人間雛人形でお内裏様ではなくお雛様の役をやらされたとか」
月「違う!」
L「おや、予想が外れました」
月「そんな単純な理由じゃない。いや、女装も絶対嫌だけど。もう2度とやりたくないけど‥‥
あぁ、うん。お前の言う通り、僕は雛祭りに余り良い思い出がないんだ」
L「‥‥やらされたんですね、お雛様役‥‥」
月「ノーコメント」
L「判りました。その辺りは後で夜神さんに確認するとして、今は問題の‥‥」
松「へぇ、いったいどんな思いでなんだい?月君」
L「(何しゃしゃり出て来てるんですか、このお邪魔虫!)差し支えなければ話してください」
月「聞いても楽しくも何ともないと思うよ‥‥」
松「日頃僕の些細な悩みを聞いてもらってるんだ。たまには僕にも愚痴をこぼしてくれよ。
頼りにならないと思うけど。話して気持ちが軽くなるってこともあるからさ」
L「どうせ月君の愚痴は役に立たない某刑事の事でしょが」
松「え?何か言った?竜崎」
L「いえ、何も‥‥」
月「ふぅ‥‥別に愚痴って程の事でも。っていうか、もう昔の事だし。
ただちょっとトラウマってるかなぁってだけの話で‥‥」
松「えぇぇっ!?月君にもトラウマなんて有るの?」
月「そりゃぁ僕だってトラウマの一つや二つありますよ。
皆さんほどじゃないですけど、それなりに人生送ってきましたから。
特にストーカー関係はベテランの域に入ってる気がします」
L「何やら今、きな臭い言葉を聞いたような‥‥」
松「僕もスから始まる恐ろしい単語を聞いた気が‥‥」
月「いいんです、気にしないでください。スで始まる困った輩に対しての対処マニュアルなら、
独自に10通りほど考えましたから」
松「いやいやいや!それはヤバイでしょ!個人の力では限界が‥‥!!」
月「机上の空論ではなく、実戦で培った対処法です。結構自信があります」
L「それはそれで怖い気が‥‥月君、結構容赦ないですから」
月「うふふふふ‥‥僕に目を付けた事、一生かかって後悔させてやったよ」
松「過去形!?もう既に犠牲者がいらっしゃる!?まさか、お亡くなりに!?」
月「犠牲者は僕なんですけど‥‥まぁ、いいです。松田さんの発言は気にしないでおきます」
L「というか、話が脱線してます。
それで?月君の雛祭りに関するトラウマとはいったい何ですか?
女装以外で私に八つ当たりするほど嫌な思い出って‥‥」
月「女装は忘れろ。いや、大したことじゃないんだ。ただ単に僕が疲れたってだけで‥‥」
松「疲れた?雛人形を飾るのにこき使われたとか?月君ちの雛人形は豪華雛段ヴァージョン?」
月「祖母から譲られた緋毛氈が眩しい五段飾りです。毎年座敷に鎮座まします。
三日の夜になるとどんなに忙しくても父が帰って来て、
三日のうちに片付けようとする母を必死に邪魔する因縁の雛人形です」
松「あぁ、うん‥‥局長、『私の目が黒いうちは息子と娘は嫁にやらん!』が口癖だもんね」
月「別に結婚願望はないつもりだし一生独身でも構わないって思ってるけど、
せめて『婿』と言って欲しいよ、父さん‥‥」
L「では、私の所へ婿に来ますか?」
月「男に突っ込むのも嫌だけど、男に突っ込まれるのはもっと嫌だから」
松「うわぁぁ~っ!竜崎!何てこと月君に言わせるんですか!!
これが局長にばれたら僕達‥‥‥!!」
月「うふふふふふふふ‥‥説教三時間コースかな?
ワタリさんとはまた一味違う地獄の時間が楽しめるよ」
L・松「「え、遠慮しておきます」」
月「取り敢えず話を元に戻すけど、トラウマって言っても本当に大したことじゃないんだ。
被害はせいぜい小学校の3~4年までだったし」
L「被害‥‥ですか?」
松「お雛様でどんな被害が?」
月「お呼ばれの席が‥‥」
L「オヨバレ?」
松「お呼ばれ!懐かしいなぁ。雛祭りは女の子の節句で僕ら男には全く関係なかったけど、
近所の女の子の家のパーティに招待されて、
小さなお雛様が乗っかったデコレーションケーキや美味しい御馳走、
雛あられを食べるのが楽しみだったっけ!」
L「日本の珍しい習慣ですね」
月「そのお呼ばれに、何人もの女の子から招待されてね‥‥」
L・松「「(あ~‥‥何だか嫌な予感が‥‥)」」
月「でも、僕の体は一つしかないから複数の招待を受ける訳にも行かなくて。
3日当日が土日ならまだしも、平日だったら掛け持ちのしようがないし‥‥」
L・松「「それでどうしたんですか?(ちょっと投槍)」」
月「そうだね。幼稚園の頃は無邪気だから逆に容赦がなくって、
問答無用の実力勝負で勝った子が僕に招待状を手渡す権利を獲得してたっけ」
L「実力勝負?」
松「勝った子?」
月「それこそ、引っ掻く噛みつく蹴る殴る、
果ては保母さんまで巻き込んでの壮絶な女同士の戦い。
お帰りの時間には負けた子達は痣だらけ絆創膏だらけな上に、
涙やら鼻水やらで顔中クシャクシャにして悔しがってたな。
来年こそは『りべんじだ~』とか言って‥‥」
L「保母さんも巻き込んで、というのは‥‥」
月「花組の子だけでなく、星組と空組の子も参戦して来てたから、
初めは自分の組の子を応援していた保母さん達も段々エスカレートして‥‥」
L「それ以上は聞かないでおきます」
月「うん、その方がいいよ。次の日の園長先生がとっても痛々しかったとだけ言っておく」
松「月君が行ってた幼稚園には花組と星組と空組があったんだね(ちょっと遠い目)」
月「女の子達が戦っている間、僕達男の子は教室の隅に片付けた机の下で丸くなってました」
松「あはははは‥‥‥」
月「でも、もっと怖いのは、お帰りの時間に迎えに来たお母さん達だったりして‥‥」
L・松「「それ以上は結構です!!」」
月「うん、賢明な判断だ。
でもまぁ、力で全てを解決してたのは無知だった幼稚園までで、
小学校に上がってからはもっと穏やかに解決するようになったんだよ。表面上は」
L「な、何ですか?その言い方」
松「穏やかだったんだろ?一応」
月「女の子の方が早く大人になりますからね。手より口の方が達者になって‥‥」
松「うわぁぁぁっ!聞きたくない、何だかとっても聞きたくない~~~!!」
月「うふふ、そりゃぁもう壮絶な毒舌合戦が繰り広げられました。しかも、1カ月以上前から。
止めに入った男の子は逆に女の子達全員から総攻撃され、立ち上がれない程ボロボロに。
何度僕達の男の友情に罅が入りそうになったか‥‥」
L「それでも男の友達は月君を嫌いにならなかったんですね?」
月「むしろ、積極的に助けてくれたよ。
何人もの友達が女の子達から仕返しされるの覚悟で、当日僕を遊びに誘ってくれた。
あぁ‥‥!あの時の熱い友情!僕は一生忘れない!!」
L「下心があったとしか‥‥」
月・松「「お前と一緒にするな!!」」
L「今さり気なく混ざってた奴!賃金カット!!」
月「そんな事したら、もう2度と膝枕で耳掻きしてあげないからね」
松「局長!自慢の息子さんがカエルの毒牙にぃぃ~~!
カエルの嫁にやるくらいなら僕がお婿にもらいます~~~~!!」
月「やっぱり賃金カットでいいよ」
L「了解しました」
松「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ‥‥‥‥‥っ!!(泡を吹いて卒倒)」
月「まぁ、そう言う訳で、僕にとって雛祭りというのは気の重いものでしかなかったんだ。
雛祭り=争いの種、という式が成り立って。雛人形を見るのも嫌、って感じかな?
幸い10歳を超える頃にはませた女の子達の方が勝手に男女を意識して、
雛祭り会の招待そのものをしなくなってくれたけどね」
L「‥‥月君」
月「うん?」
L「貴方、キラにならなくとも新世界の神になれるんじゃないですか?」
月「ヤダよ、女の子のご機嫌取りなんて面倒臭いし大変じゃないか。
そんな苦労は母さんと粧裕と海砂だけで十分だよ。
それに、女心と秋の空って言うだろ?
そんな不確かなものに賭けるのは僕のポリシーに反するね。
ちなみに言っておくけど、僕はキラじゃないから。
世界征服は男の子の夢、ってね」
L「貴方の場合、夢で終わりそうにないのが怖いです。
しかも、男は全員下僕にしそうで‥‥」
月「やだなぁ、竜崎。僕は日本一と言ってもいいくらいの真面目な優等生だよ」
L「その笑顔が超力胡散臭くて可愛いです。やっぱり私の嫁に‥‥」
月「父さんがいないからって安心するのは早いよ。
GO!モンチッチ!!」
L「え?は!?ラ、月君!貴方、やっぱり男は全員下僕化計画を‥‥!!
ギャァァァァ~~~~!潰れる~~~~~!!」
★ ☆ ★ ☆ ★
その頃夜神家では、一時帰宅を強引に奪い取った総一郎パパが、
妻の幸子、可愛い娘粧裕との間で壮絶な家族戦争をおっぱじめようとしていた。
父「こ、今年こそはお雛様を出しっ放しにするんだ~~~~!」
母「貴方!何バカな事を言ってるんですか!!」
粧「そうだよ!お父さんは粧裕が行き遅れちゃってもいいの!?」
父「そうなったらパパが一生面倒を見てやる!
そ、そうじゃない!そうじゃないんだ!!今は粧裕より月が~~~!!!
月がカエルの毒牙にかかりそうなんだ~~~!!!!」
母「だから、月は嫁を貰うんであって嫁には行きません!
その貰う嫁だって、パンツが見えるような嫁は絶対許しません!!」
粧「お母さん、ミサミサ嫌いだもんねぇ。ってか、カエルって誰?」
父「月ォォォォ!お前の操は父さんが守ってやるぞ~~~~~!!!!!!!」
(自分で守れるからいいよ、父さん ―――――― 月談)
お後が宜しいようで。